第2回「相関設計」若手コロキウムを7/22(火)にオンライン開催します。
第2回「相関設計」若手コロキウム
〇 7/22(火)15:30-, オンライン(下記から事前登録をお願いします)
https://zoom.us/meeting/register/cFZJGoaNR0-F48T9Rn2dVA
〇プログラム: 座長 高橋 龍之介(兵庫県立大学)
15:30-16:00
今井 渉平(東京大学大学院理学系研究科)
「量子光誘起多体電子ダイナミクス」
近年の光技術の発展により、多数の光子を含む量子的な光(真空スクイーズド光やシュレディンガーの猫状態光など)が生成可能となってきた。我々はこのような量子光を用いて、これまで古典的なレーザー光で行われてきた光誘起多体電子ダイナミクスを再検討する研究を進めている[1,2]。
本発表では、巨視的な量子光の下での電子ダイナミクスを記述する有効理論の導出や、巨視的な量子物性の変化に必要な要素について、最近の成果を紹介する。
[1] S. Imai, A. Ono, and N. Tsuji, arXiv:2501.16801.
[2] S. Imai, in preparation.
16:00-16:30
金賀 穂(千葉大学大学院理学研究院)
「電子系・スピン系の動的応答制御と特性検出:高次高調波・光整流・スピンゼーベック効果」
本講演では、光・熱励起による電子/スピン系の動的応答制御と特性検出に関する最新の理論成果を報告する。第一に、グラフェンにおける二色レーザー誘起光整流・高次高調波を取り上げる。散逸効果を含む量子マスター方程式の数値解析により、二色レーザー下で応答のパラメータ依存性を網羅的に解析し、空間反転対称な系における光整流や高次高調波の定量的制御の指針を与えた[1]。
第二に、BKT転移を示す擬二次元反強磁性体BaNi2V2O8のスピンゼーベック効果(SSE)を論じる。ランダウ-リフシッツ-ギルバート方程式に基づき、磁性体と金属の接合系において、界面の非摂動効果も取り込んだトンネルスピン流の数値解析法を開発した。この数値解析法から得られたスピン流の磁場・温度依存性が実験と整合することを示し、観測されたSSEがBKT相の強いスピンゆらぎに由来することを見出した[2]。
[1] M. Kanega and M. Sato, Phys. Rev. B 112, 045306 (2025).
[2] K. Nakagawa, M. Kanega, T. Yokouchi, M. Sato, and Y. Shiomi, Phys. Rev. Materials 9, L011401 (2025).
16:30-17:00
林田 健志(HFML-FELIX, Radboud University)
「時間反転対称性の破れた反強磁性体における電場誘起方向二色性の観測/
THz自由電子レーザー施設FELIXのご紹介」
反強磁性体は、磁気モーメントが全体の磁化を打ち消すように秩序化した材料として定義される。この広義の定義にはさまざまな種類の反強磁性体が含まれるため、どのような現象や機能が現れるかを考える場合、磁気秩序によって生じる対称性の破れに基づいた分類が必要となる。特に、時間反転(𝒯)対称性の破れは特異な現象を引き起こす。本講演では、時間反転奇(𝒯-odd)な反強磁性体の中でも、磁化のような 𝒯-odd なベクトル量ではなく、𝒯-oddな「スカラー量」によって特徴づけられる反強磁性体[2] に着目する。そのような物質では、異常ホール効果のような強磁性体的な振る舞いとは異なる、特異な効果が生じうる。その⼀例が、対角の電気トロイダル(ET)効果[3]であり、これは電場Eを印加すると、それと平行な方向にトロイダルモーメントT(磁気双極子の渦状配列)が誘起される現象を指す。
本講演では、電場誘起の非相反方向二色性を用いることで ET 効果を観測できることを示し、さらに、この手法が反強磁性ドメイン構造の可視化にも有効であることを紹介する [4]。また、現在所属する FELIX Laboratory (https://hfml-felix.com/)では THz 領域の自由電子レーザーを用いた測定、特に様々な秩序状態の THz 光照射による制御に取り組んでいる。FELIXでは、外部ユーザーの利用も募集しているため、講演の後半では施設の特徴について紹介する。
[1] Y. Tokura and N. Nagaosa, Nat. Commun. 9, 3740 (2018).
[2] S. Hayami et al., Phys. Rev. B 108, L140409 (2023).
[3] H. Schmid et al., Ferroelectrics 252, 41–50 (2001).
[4] T. Hayashida et al., Adv. Mater. 37, 2414876 (2025).